縦置きエンジンではジャイロ効果で左右ターンに非対称性が
縦置きエンジンで高速回転している駆動系に対して、操舵によって軸の方向を変える力が加わるとき、ジャイロ効果によって左右の曲がり具合にはわずかながら差が生じます。回転軸の方向を変える力が加わると生じる歳差運動によって別の回転させる力が発生するのです。
一般的に車両前方から見て右周りに高速回転している、エンジンやフライホイールに出力軸といった回転軸の前方に、左にターンするために左向きに加えられた操舵トルクは、回転軸の角運動量によってジャイロ効果が下向きの力を “ほんのわずかに” 誘発し、フロントのピッチダウントルクが車両をオーバーステア傾向にします。その逆に右ターンでは、右向きの操舵トルクが誘発したピッチアップトルクのためにアンダーステア傾向となります(横置きエンジンの場合にはロール効果が生じるでしょう)。
逆方向に回転するギアスタックではそれぞれに効果が生じるし、リアアクスルでは荷重移動によってその効果が生じるでしょう。また、ホイールベースは力点の位置を決めるものとして関連するでしょうし、重心としてエンジン搭載位置も作用するでしょう。
2016s3 ビルドは少し間違ってたので 2016s4 ビルドで修正します
メンバーフォーラムでの左右ターンの違いに関する議論では、想定されるよりもその効果が大きく働いているように見えることから iRacing がコードを再確認したところ、現行ビルドではデフケースやリングギアでのジャイロ効果によってトルクの生じる向きが誤って実装されており、ピッチトルクを上積みすることになってしまっていたと、CEO で開発責任者の Dave Kaemmer が述べています。つまり、現実に左右のターン差は生じるが iRacing 2016s3 ビルドでは左右ターンでの非対称性は現実よりも大きくなってしまっていると。
※メンバーによる検証動画の一例
https://www.youtube.com/watch?v=-9j0eOck6EQ
これらの部品の質量は全体からすればわずかなので実際の影響は大きくはないようですが、次期 2016s4 ビルドでは修正されるそうです。かなりおおざっぱに言って、2016s3 ビルドでは前後に +-9kg の荷重移動が左ターンで発生している(右ターンではその逆)のが、修正後には +-2kg 程度となる見込みのようです。
本記事はメンバーフォーラムの Asymmetric handling of ALL cars トピックでの議論から話題を抽出して記述しました。
http://members.iracing.com/jforum/posts/list/3489036.page