iRacing の最新 SimRacingNews ブログより、ダート・シム・レーシングのプランについて、トニー・ガードナー社長のインタビューという形式の記事が掲載されていましたので、以下に和訳してみました。

#DIRTCONFIRMED

2016年4月1日、ハッシュタグ #DIRTCONFIRMED がシムレーシング界隈にショックを与えた。マジで? エイプリルフールでしょ? そして 3日後、その答えは出た。ダート、その興奮がシムレーシングコミュニティにやってくる。

Tony Gardnerインタビュー

ダートオーバルの魅力、それは最初から最後までレースが大きく動き続けること。荒れた路面に跳ねる右リアを弾き出し、高いスピードのまま横を向き、スライドをスロットルコントロールしてコーナーを抜けるドライバーの軌跡がそれぞれのグルーブを作っていく。北米ではとても有名だし、そしてオーストラリアにニュージーランド、英国などでもよく知られてて人気のある競技だ。iRacing はこれらの魅力を伝えることができるのだろうか。iRacing 社長トニー ガードナーが開発初期段階におけるインタビューに答えてくれた。


Q: 現在のダイナミックトラックでは、熱とラバーがグリップを決定するキーファクターですよね。これに水分が加わってダートの粘着度が再現されていくのでしょうか。ルーズなダートがマーブルのようにトラック上で動いたり、そうしてグルーブが動くことでクッションフォームができたりするのでしょうか。

A: ダートのフィジクスとグラフィックはまだリサーチと初期開発という現時点でお答えしよう。イエス、水分はダートの公式を構成するひとつだ。それはレース中ダイナミックに変動し続け、ダート中の水分はトラックの天候状況から影響を受ける。それ自身のフィジクスという面でも、ダートはトラック上を動き、グルーブや轍を形成する。実際のところ、あまり表情を見せないダート下層に降りてみれば、そこにはラバーものっていく。レース状況によってはクッションも作られる。ダートの一番上にはソフトで緩い階層、その下にはハードな層がある。どのトラックにもそれぞれ年季の入った深さ・組成のルーズダートとハードレイヤーなどがあるのだ。グラフィックやビジュアル面でも、ダートの動きとビルドアップを、計算処理するフィジクスを作ろうとしている。

Q: 初期状態のトラックで、水分はダイナミックウェザーを構築する一要素となるのでしょうか。例えば、あるレースではトラックは濡れて粘着度の高い(ラバーアップしにくい)こともあるし、別のレースでは乾いている(ラバーがのりやすい)こともある?

A: イエス、天候は水分に影響する。現在のアスファルトのダイナミックトラックと同様だ。どのレースも違ったトラック状況でのスタートとなるだろう。しかし天候は別だ。これが違ったらレーシングが変わってしまう。ダートというのはその状況が変わるものだ。水分などの複数の要因がそこにはあるし、”slightly-used” (ちょっとだけ使った), “used” (使われた), “all torn-up” (ずたずた) といったような、実際のレースがヒートアップした後のトラックコンディションを再現できるようにする。オフィシャルシリーズについてのディスカッションはまだしていないが、我々がずたずたのコンディションでレースをスタートさせることはないとは思うが、毎回パーフェクトな路面で始めることもできるし、そうしないこともできるということだ。ホストセッションではそれを選択することもできるだろう。ついさっきエンジニアと話してきたところで自分もさっき知ったところなんだが、それが可能だ。オフィシャルレースはすべてクリーンな状況からスタートさせる傾向にあるだろうね。

dirtcushion
Q: クッションや轍といった路面変化のグラフィックやグリップ変化はどのように

A: 現在のところ、というのが私の希望だが、開発中段階のものはテクスチャやブレンドで3D効果を持たせた2Dだ。次のステップで3Dダートグラフィックアートを加えるだろうが、それはプランの初期フェーズにはない。

Q: それらの開発によってアスファルト路面上の芝やダート・砂もよりリアルになりますか?

A: そうだ、例えば現在のiRacingでのダートや芝やタイヤカス、これらは単にダートや芝やタイヤカスではなく、路面にとどまるこれらの上を通るマシンに影響をあたえるのだから。

Q: トラック上ではマシンがウォールを汚したり泥をつけたりします。ウェットトラックで夜通しレースをすると泥が落ちたり、レース中に付着した泥でマシンは重たくなったりします。これらがレースの景観を変化させることを見ることができますか。

A: イエスだ。計画では、マシンはダートを拾うし、レースが進むにつれてかさむその重量はフィジクスに影響する。

Q: ダートレーシングのもうひとつのキー要素、泥や土はコクピットに入ってきてドライバーのバイザーを汚すことがありますが、アスファルト路面のストックカーでウインドシールドをそうできるように、バイザーのティアオフもできるのでしょうか。

A: ダートを取り除くなんらかのティアオフはできるようにする予定だ。

Q: 現在の iRacing のフォーマットはサーバーでのシングルレースです。最近は予選がアタッチされました。ヒートレースや予選レースといったイベント拡張の予定はありませんか。20台の車を10台ずつ走行/観戦の2組に分けて交互にレースしたあとで最終レースとか。

A: トーナメントで似たようなことはできる。しかしオフィシャルレーシングでそれが soon リストに入っているのは見たことがないな。やるとしたら、それはとても大きなプロジェクトとして分離して行われるようなものになるだろう。

Q: ダートのオーバルとロードがそれぞれの iR/SR レーティングを持つとのことでした。2008年のスタートと同じように、全員が同じノーマルレベルからスタートするのか、それとも舗装路レーティングをベースに計算されるのでしょうか。

A: 新しいライセンスタイプを追加するというのは特にウェブエンジニアにとって大きなプロジェクトだ。現時点では全員が同じレベルからのスタートで、これまでの経歴はダートライセンスに影響しない。60,000以上の人々が一斉に同じレベルで新しいことをスタートするというのはとても楽しいだろう。

Q: プラクティス中、ダートトラック外側にあるピットロードから合流するのは危険なのでは、という話題もありました。舗装路とダートと。できる限り現実に忠実に、というiRacingの伝統的なスタンスを壊すかもしれませんが、たとえばプラクティスで Join Track をクリックしたときにはインフィールドへマシンが置かれるというのはどうでしょう。レース中のトラックへの進入路はコーションでない限りクローズして。たとえば Chili Bowl in Tulsa のようなイベントで、こういったことは可能でしょうか?

A: 少なくとも実際のレーシングにおいて、外側からスタートすることが楽しいとは思わないし、多くのレーサーとその話をした。ハイスピードで迫ってくるトラフィックの外側に、速度がない状態では入っていけない。シムであっても同じだ。十分に均衡させる手段がないと困難だ。現実に外側にピットがあれば我々はそのように構築したいし、現時点では、内側にピットの列を配置するか、その特定のトラック構築を見送る、ということになるだろう。

Q: ダートレーシングではイエローが出ている周回はレース距離にカウントしませんし、イエロー中のフィニッシュもありません。iRacing はこの点について作業していますか? そしてNASCARシリーズに G-W-C (Green White Checker) フォーマットを適用できるようになりますか?

A: 今その仕様に触れはしないが、ダートオーバルやダートロード/ラリーレーシング向けに、レースコントロールの調整プランをいくつか持っているし、接触とインシデントポイントのコントロールについても同様だ。

Q: イエローが振られた時点の順位よりも、その直前の周回時点の順位に戻すシリーズの方が多いですが、ホステッドのオプションルールに加えたり、そのルールを適用するシリーズができたりといったことは可能でしょうか?

A: たいていのことは可能だ。すべては十分な時間とお金があればな。しかし先に述べたように、現時点でダートレーシングのレースコントロール仕様について触れることはしない。一般的な話として、自動レースコントロールの分野はとても大きくとても複雑だが、我々はベストを尽くすだけだ。ついでに言えば、一般的な話だが、現実世界のレースコントロールで起こる細かなすべてをコピーしなくても楽しむことはできるし、我々自身がレース統括団体なのだから。

Q: 先ほども触れた Chili Bowl in Tulsa はダートでの最大のイベントのひとつですが、しかしとても小さなトラックで開催されています。iRacing サービスではこのようなイベントをどのように開催されることになるのでしょう。1週間かけて夜間予選とメインイベントを再現したりしますか?

A: iRacing には多くのダートマシンが追加されることになるだろう。より多くのマシンを追加するということを含め、多くのことに高いモチベーションを持っている。ダートレースは他のどのレースとも違う形態であり、現時点ではオーバルでは Clint Bowyer’s Super Late Model、ロードでは Ford Fiesta でその作業を開始している。

Boyer-LMsCGRT-rallycross

Q: 多くのダートマシンはそのサスペンションで大きな荷重移動を支えています。見た目からも分かりますが、Late Model は左フロントは大きく地表から浮き上がるセットアップです。簡単にシムで再現する何かがあったり、ネットコードを通じてまわりのドライバーがそう見えるのでしょうか。

A: えぇ? ダートの重量で変化するサスペンションによってビジュアル面の変化が生じるかと言っているのか? セオリーではそこにはビジュアルの変化はあるが、アルファ版ではまだ車両がないのでそこでどうなるかはまだ見ていない。社内でもそんな質問聞いたことはないよ。

Q: もしダートで新車が1台というのなら、Topless、 Ultimate、Sideboards、といったように、Late Model にいくつかのバリエーションをもたせることはできないでしょうか。Ruf と同じような手法で。また、Limited Late Model のようにエンジンを小さく載せ換えたバージョンを下のシリーズとして作ったりということもできないでしょうか。

A: その答えを出すためには数人集めて会議を開かないといけないな。このような質問の答えには、それぞれのマシンのディテールの違いを研究する必要がある。Ruf でのバージョン違いは、車両ボディの違いというよりも主にフィジクスとエンジン出力だ。ともかく、Dirt Late Model の仕様違いに関してこれまで何のディスカッションもしていない。それが計画にあったとしても、少なくともマシン開発の遅延が生じる程度だろう。現在のプランでは、最初のマシンは Clint Boyer のショップでスキャンした Late Model と Chip Ganassi Racing でスキャンした Ford Fiesta Global Rallycross だ。

Q: ダート車両にはとても多くのルールや規格がありますね、305, 360, 410 sprint とか、ウイングの有無とか。ホステッドやテストセッションで、ひとつのマシンでこういった複数の設定を選択できるようになったりしますか?

A: Late Model のバリエーションということで言えば、現時点ではそういったディスカッションはしていない。

Q: NASCARとのパートナーシップは、舗装路のトップシリーズをより本格的なものにするのに大きな働きとなっています。同様の取り組みが World Of Outlaws, USAC, IMCA, といったシリーズと予定されていますか? 将来、ダート世界選手権が開催されますか?

A: 何でも可能だよ。今はその特徴ある新しいフォーマットを動かすことが目標だ。このようなケースにおいては、何かが具体的になってから、ライセンスやビジネスがいい結果をもたらすと分かるんだ。

Q: 現在開催されているシリーズではスポッターやバーチャルミラーが使えます。実生活とは異なるものをシムで持っているが、これは変わらず有効なのでしょうか。

A: その通りだ。ドライビングを安全にするためにそれらの機能は外されないだろう。指摘されるように、仮想世界では周囲を認識できる度合が現実世界ほどはよくないのだから。

Q: ダートオーバルやラリークロスでの作業は、舗装路においての向上にも効くと思いますか? もしそうなら、そのプロジェクトの作業から現在のシリーズにはどのような恩恵があるでしょうか。

A: 全体的な開発の範囲では、イエス、他の部分へも助けとなるだろう。先に述べたようにダートモデルの開発はすでに全体的な路面のモデリングの助けとなっている。全体的にグラフィック面のテクニックも向上する。将来的には、アスファルトサーキットでレーシングサーフェスを外れた箇所については、既存の路面モデルを置き換えることになっているかもしれないが、少なくとも近い将来で言えば、その可能性は高くはないだろう。私は他の大きな点として、ダートレーシングが新しいカスタマーを呼び、そこで得られる収益がさらなる開発を助けるだろうと考える。新しいメンバーは舗装路でのシリーズでも競うようになる。コミュニティ全体のサイズを大きくすることも単純に多くのアドバンテージを生むだろう。

Q: ダートレーシングの発表以来、どのようにファンとプロドライバーが誇大広告と比較しますか。専門家によるアウトリーチは力になったと思いますか。

A: 最初の1週間は、大西洋の両側から多くのプロドライバーがその興奮で我々に手をのばしてくれた。

Q: トラックのアウトリーチはどのような状況でしょう。現時点で契約手前と言えるトラックはいつくありますか?

A: リアクションにはエキサイトしている。トラックが不足していないのは確かだ! それらすべてを作る方法がない。アスファルトかダートかは関係なく、皆の好すきなローカルトラックすべてを作ることはできないが、オーバルトラックとマシン、ロードコースとマシン、それらインベントリを充実させることが我々のゴールだ。既存アスファルトトラックに、ダートオーバルとラリーロードサーキットのレイアウトを加えていくつもりだ。それにより良いインベントリでスタートすることができるし、そのトラックのアスファルトバージョンを所有するメンバーは無償でダートコースを入手することができるだろう。

Q: 動画ではダートシムレーシングが 2016 だと言っていました。可能性ということなのでしょうか。Eldora のスキャンはいつ頃の予定なんですか?

A: Eldora は今週スキャンする予定だ!(*この翻訳記事をアップする前にスキャン済み) 動画で今年ロールアウトすると言ってることは知っている。確かにそれが目標だし、それは可能だ。しかし特にこのようなことの場合、ここでリリース日を予告することはしたくない。

Q: スキャンプロセスにおいて、サーフェスはどのようにしてシム上で働くものになっていくのですか? スキャンはレース後に行われるのでしょうか。それともトラックが使われていく間に? どのようにしてサーフェスを高い再現性を保つのでしょうか。

A: リサーチと開発の両方のプロジェクトだ。サーフェスのスキャンおよび製造工程において、新しい技術が開発されていく。来週予定しているWilliams Grove Speedwayを含め、いくつかのダートトラックをスキャンする際、レース前の完璧な状態のサーフェスをスキャンし、その後レースをいくつか経たあとのサーフェスもスキャンする。

Q: このダートプロジェクトはいつから取り組んでいるのですか? アスファルト路面と比べて、予想していたより大変でしたか?

A: このプロジェクトの作業は数か月間行っているが、何に取り組んでいたかによって答えは変わる。最初にこのプロジェクトにフォーカスする少人数グループを作った。

公正なマルチプレーヤー・ダート・レーシングを構築するにあたり、大きな要素となったのは新しいサーフェスモデルだ。そしてそのサーフェス状況を複数プレーヤーに送信するための新しいネットコードとサーバーコードも必要です。ダートについて真剣に考えるようになるまで、18か月掛かりました。しかしそれなしではマルチプレーヤー・ダート・レーシングは不可能と言える、不可欠な基盤だ。すでに完了していたり実行中の新しいグラフィックプロジェクトも、ダートレーシングをグラフィック的に可能とするために助けになった。もちろん、我々はこういったプロジェクトを進めることで新しい可能性が開くことを知っていた。ダートの追加といったような可能性を。それがある特定の開発事項だけでは判断できない理由だ。どんな新しいプロジェクトにも複数の理由があり、そしてそれには特に長い期間他の領域にインパクトを与える可能性も含まれている。その意味から言えば、ダートに必要だった予備的プロジェクトを含めれば、ダートのために費やしてきたのは数か月のではなく、それをはるかに上回る2, 3年ということになる。

質問の最後のパートだが、おそらく、アスファルト・レーシングの開発とダートレーシングの開発を比較することは生産的ではないだろう。あるいは、もっとよく言えば、その質問に答えるのは不可能だ。舗装されたトラックの開発というのは、大きな作業ボリュームがある。我々のフルチームが何年もプロジェクトに関与していた。しかし我々はただトラックを製造していたわけじゃない。我々はシムを作っていたのだし、トラックを製造するためのプロプライエタリなツール(独自開発のツール)も作っていたし、レーザースキャン製造プロセスの手法も確立した。言及はしないが、マシンや物理モデル、タイヤ、その他すべての要素が、集中化されたサービスや競技、そしてレーシングを構成するすべてを構築するために必要だったのだ。そして今すべてができたのだ。だからその点では、ダートはとても簡単だ。そう願いたいね!

*iRacing SimRacingNews blog: (Almost) Everything You Wanted to Know About iRacing’s Dirt Sim Racing Plans