Q CIRCLES

iRacing共同設立者でCEO・CTOであるDave Kaemmerが新しいブログ記事「Q circles: The crop circles of iRacing?」を投稿しています。
http://www.iracing.com/news/blog/q-circles-the-crop-circles-of-iracing/

長くて難しい記事ですが、Qサークルって何?何を言っているの、を抜き出して翻訳してみました。
例によって間違いなどありましたらご指摘いただけると助かります。

Q サークル

スーパースピードウェイにおいて、まったく同じように走ったはずなのに、ラップタイムが周ごとに上下する問題が発生していました。長いレースではあまり問題にならないかもしれませんが、予選には影響を与えます。

実はこの問題はNascar 4のときから表面化しましたが、実際にはGrand Prix Legendsから潜在していたものです。しかしながら、これまで解明できていませんでした。

予選では奇妙な儀式を目にすることがありました。予選で走り出す前にピットレーンでぐるっと円を描くように1回転するのです。そうすると、上下するラップタイムの良い方を残せるアドバンテージを得られるからです。これがQサークルです。

しかしこれは許されるのか? スポーツマンシップに反するのではないか。そういう議論もたくさんなされました。NASCAR iRacing.com World Championshipでは、予選上位20名にリプレイを提出してもらったので Qサークルを使っていないことを保証できます。

四元数と丸め処理

最近、この問題をやっと解明できました。問題のキーだったのは四元数と丸め処理でした。

四元数とはヨー・ピッチ・ロールでなじみのある3D方向を示すオイラー角に加えて軸の回転を表現することができるものです。発見者の名前にちなんでハミルトン数とも呼ばれます。

ある軸を720度回転してサイン・コサイン部をぐるっと一回りしたとき、それはまったく逆の方向に同じだけ回転したのと同じになるはずですが、コンピュータの精度には限界があるので、その値が正なのか負なのかによって小数部の丸め処理で誤差が発生します(実際のところIEEE float型23ビットを使用)。そして、エアロダイナミクスによるドラッグとダウンフォース、タイヤフォース、重力に至るまで、回転のあるすべてのベクトルに対して同じ計算式が使われているのです。デバッガ上でリプレイから回転軸や四元数の値を書き出して原因を究明しました。フォースのベクトル、速度のベクトル、加速度のベクトルがマシンを動かしており、これが正・負で1ビットの誤差を生じ、わずかに大きなダウンフォース、わずかに大きなコーナリングフォース、わずかに大きな速度などが 1周分揃って非常に長いベクトルとなるタラデガなどでは、その違いがラップタイムにはっきりと表れるのです。

この問題を理解し、そして修正できたので、やっとよく眠れそうです。
そしてあなたもピットレーンをまっすぐ出ていけばいいのです。もしQサークルを描いているドライバーを見たとしても、彼らは自分の目を回しているだけなのです。

ちなみに、これとは別に、先日のアップデートで修正された、車検に通らない不正セットアップで走行できていた問題も、ラップタイムに大きな影響を与えていたと思われます。

ピットロードに出てからパラメータを書き換えてしまうハックも存在していましたが、そういったものに手を出さないでください。監視システムによって、アカウント停止などの処分がなされることがあります。
iRacingはただのゲームではなく、競技として成り立たせるためのシステム作りがされています。