Safety Rating

※初出:http://d.hatena.ne.jp/shutaro/20100311/iracing_safety_rating

iRacing.com 共同設立者で CEO 兼 CTO である Dave Kaemmer が、最新ブログ記事で Safety Rating について書いています。

iRacing.com | Safety Ratings – a cure for the mayhem in online racing games? (March 10, 2010)

以下に和訳して紹介します。

iRacingでのオンラインレースシリーズについてまだ計画を練っている頃、我々は困難な問題に直面していた。

オンラインレーシングを、より現実のレーストラックと同じように過ごせるようにするために、バーチャルドライビングにおいて、どうすればオーバードライビングさせないようにできるのか、どうすれば他のマシンにぶつけさせないようにできるのだろうか。

最終的に我々は、白熱した議論を生むであろうSafety Ratingシステムをその解としたのだが、そのルーツを含むシステムの背景を説明しておくべきだろう。そういうことだから、議論に油を注いでいくよ!

我々は現実世界の体験を再現しようとしているが、オンラインレーシングではクラッシュしても安全だしお金もそんなにかからないし、何かと便利だ。だからやってるわけだけどね! しかしながら、簡単に修理できて請求もほとんど発生しないことから、安全への気遣いを不足させ、シムレーシングはそういった横暴を制御できないという評価に手を貸してしまう。この横暴な行動を取り除くことこそが、我々がiRacingにもたらすインセンティブであり、クリーンでよりリアルなオンラインレースを生み出すのだ。

クラッシュダメージに小額の金銭を課すことも、我々が熟考した多くのアイデアのひとつだった。誰がそれを引き起こしたかは問わずマシンの所有者に修理代を課すもので、現実のレーシングとほぼ同じだ。とはいえ、逆により多くのクラッシュを誘引する可能性もあり、我々が目指すものではない。どんなに少ない額でも、トラック上での不運から金銭の支払いが生じることは、否応無く生理的に悪い印象をエスカレートする。現実のクラッシュより良いことは生きていられることだけ。これはオンラインについて当てはまるものというわけではなく、シミュレーションであることによるもの。だからこの案は放棄された。クラッシュ後の憤りなんて要らないよね。

最終的な結論として、我々は安全なドライビングマナーを促すためのいくつかの実装を行った。ひとつはドライバーに責任を持たせるために実名を使わせること。実際にレーストラックでは、実名で署名されたドライバーライセンスで、自分が誰なのかを示す必要がある。自身の風評を傷つけないように振る舞う動機ともなるわけだ。

全体の安全性を高める別の方法として、新規メンバーはRookieとしてパワーのないマシンから始めさせ、学習してレーシングライセンスが上がれば、より速くて難しいマシンを許すことを考えた。実際問題、ドライビングキャリアの1日目にいきなりIndyCarに乗る人は居ないし、速いマシンの前にまず遅いマシンをマスターしてから徐々に進んでいく、というのも道理にかなう。ではいつマスターしたと言えるのか。現実世界を見ると、その答えは速いマシン用に十分なお金を得たとき。というのは冗談ですが、まぁ実際のところ、たくさん壊して多額の代償を支払ったドライバーは、そのキャリアにつまづく傾向はあります。

iRacingにおいては、そのドライバーがどんなに速かろうが、速いマシンへの昇格はドライバーの安全記録でのみ測られるべきだと我々は決定した。オンラインレーシングでは、トラック上での騒乱を最小限に抑えるためには、スピードよりも安全性が極めて重要なのだ。現実世界でも、安全性の重要さは明確に述べられることがなくとも疑う余地はない。“あのバカがぶつけやがった!”なんて言い訳は、インストラクターやオフィシャルが眉毛を吊り上げて他にかかわったバカがいるのか疑うまでの2,3回しか使えないね。速く走るのはいい。でも、安全な方がよりよい。ロングランでは安全に行くことが結果的にも速くなる。新人ドライバーはたいてい、大きなリスクなしではタイヤのキャパシティ限界でマシンを走らせることができないし、マシンの限界よりも先にドライバーの限界に到達して、速い=恐いととらえたり、“速く走るためにはよりアグレッシブさが必要だ”と考える傾向もある。ドライバーは経験を積むに従って、ゾッとするような限界を超えても、タイヤの力曲線をスライドさせてマシンを安全にコントロールすることを学習していく。ひとたびそうできるようになると、一貫してタイヤキャパシティのピークをキープできるように取り組み、マシンコントロール能力の限界に近づけていく。つまり、速いドライバー達はアグレッシブだから速いのではなく、多くのスキルを学習したから速いのだ。

残念ながら、いくつかのリスクを負わなければ、それらを習得することはできない。だが、習得への最善策は、速く走るべく自身をプッシュすることと、アグレッシブさを自分の制御下に置くバランスだ。そうすれば、しばしばクラッシュすることもない。iRacingのSafety Rating (SR) は、いかによくそのバランスを見つけられているかの手がかりを提供するシステムだ。簡単に言うとこうだ。

* SR が 2以下なら、アグレッシブさをもっと抑える必要があるので、ハードな順位争いはしないで、根気強く安全にドライビングすることに集中しなさい
* SR が 4以上なら、ライセンスレベルに応じたよい安全性を保っているので、スピードを求めて少しハードにプッシュしてもよい
* SR が 3点台なら、それはちょうどよいバランスを見つけている

一般的に、トラブルを避けようと努めていれば、レースでよいフィニッシュを得られるだろう。他のドライバーがいつもぶつけてくるというのなら、現実の車を運転しているようにドライビングしているのかどうか、真剣に考える必要があるね。二人以上のドライバーが関わるほとんどすべてのインシデントは、すべてのドライバーに責任がある。5% しか非がなかったとしても、避けることはできたかもしれない。もしもまったく非がなかったとしたら、そういうアクシデントもレースなのだから、あまり気に病まないことだ。長い期間で見れば、それは SR に対して大きな打撃とはならないだろう。

ライセンスレベルが上がるにつれ、安全なドライビングへの期待はやや高く設定される。クラス D で SR 4.5 のドライバーがクラス C に昇格したら、SR は 1.0 少なくなって 3.5 となるのだ。言い換えれば、クラス D で最高レベルの安全性のドライバーは、クラス C で見ると良レベルのドライバーでしかないわけだ。ライセンスが上がれば、安全性に再び注力する必要があるということだね。ただ、経験を積むのに従って、それはドライバーにとって難しいことではなくなるだろう。SR は多くの人が密接に感じることができるようになっている。セッション終了時には、ドライバーのライセンスレベルに対して、そのセッションでのドライビングが安全だったか(SRが上がる)、そうではなかったか(SRが下がる)が示されるが、SR 自体は、ちょっと不運や幸運が連続しただけでは左右されない、ある程度長い期間で見たドライバーの安全レベルが反映されて変動するものだ。その結果としての SR は、簡単に言えば、 2 なら控えろ、3 ならいいレベル、4 ならもっと攻めてよい、と受け止めればよいだろう。もちろん、クラス A ドライバー以外は、Fast Track プログラムなどでライセンスがひとつ上がれば、 SR が 3 に巻き戻って設定される、ということもあるがね。我々はこの SR システムがみんなのドライビングの助けとなること、そしてより良いオンラインレーシングを行えることを期待している!